イタリアのフラットタックス制度が注目されています。この特別な税制は、国外所得に定額を課すことで多くの富裕層を惹きつけていす。しかし、その効果については懸念の声も上がっています。実際に、イタリア会計検査院がこのフラットタックス制度の真価について警鐘を鳴らしているのです。この記事では、この制度の仕組みと問題点を分かりやすく解説します。
フラットタックス制度の仕組みとは？
この制度は2017年に導入されました。正式名称はTUIR第24条の2に基づく選択制の税制です。その目的は、高額所得者をイタリアに呼び込むことにあります。具体的には、過去10年のうち9年以上イタリア非居住者だった人が対象となります。そして、居住地をイタリアに移すことで、このフラットタックスの適用を選択できます。
この制度を選ぶと、国外で得た所得に対し年間10万ユーロの固定税を支払います。つまり、イタリアは国外所得の詳細な申告を求めません。さらに、国外の不動産や金融資産への追加資産税も免除されます。そのため、このフラットタックスはグローバルに資産を持つ富裕層にとって非常に魅力的です。また、家族も一人当たり2万5千ユーロの追加で制度に加入できます。詳細についてはイタリア歳入庁の公式サイトで確認できます。
フラットタックスによる移住者の増加
会計検査院の報告によると、この制度の人気は高まっています。例えば、2021年には1,339人の新規居住者がこの制度を利用しました。これにより、国庫には多額の税収がもたらされています。このように、フラットタックスは着実に富裕層をイタリアに引き寄せているのです。
さらに、英国の税制変更がこの流れを加速させる可能性があります。英国は長年「非定住者（non-dom）」制度で富裕層を優遇してきました。しかし、この制度が2025年に廃止されるため、多くの富裕層が新たな居住地を探しています。その結果、イタリアのフラットタックスを利用する人がさらに増えると予想されます。
会計検査院が指摘する問題点
しかし、会計検査院はこの制度を手放しで評価しているわけではありません。むしろ、重大な懸念を示しています。問題は、この制度がイタリア経済に本当に貢献しているかどうかが不透明な点です。富は集まりますが、その実態が見えにくいのです。
会計検査院の文書にはこうあります。「国は、生産的な投資との実質的な関連性を要求も測定もしていない」。つまり、このフラットタックス制度は、富裕層がイタリア国内で投資を行うことを義務付けていません。そのため、単に税負担を軽くするだけで、経済への貢献が伴わないケースも多いのです。
したがって、この制度は国の税収を増やす一方で、国内経済の活性化には直結しない可能性があります。フラットタックスが本当に成功したと言えるのか、その評価はまだ定まっていません。今後の政策と監視が重要になるでしょう。
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